A100 x4で大型ローカルLLMはどこまで使えるか: 実際の質問と回答例で比較
A100 80GB x4のGPUサーバで複数のローカルLLMを動かし、導入説明、障害メモ、要約、ブログ構成という実務寄りの質問で回答の違いを比較しました。
A100 80GBを4枚搭載したGPUサーバで、複数のローカルLLMを実際に動かし、同じ質問にどう答えるかを比較しました。
動画版はこちらです。短く全体像を見たい場合は動画を、質問と回答例をもう少し詳しく読みたい場合はこの記事を参照してください。
動画では全体像を短くまとめましたが、ブログではもう少し踏み込んで、実際に投げた質問、返ってきた回答の要点、モデルごとの違いを整理します。単に「どのモデルが速いか」ではなく、「どのモデルがどの用途に向くか」を見るための実測メモです。
注意: これは公式ベンチマークではありません。同一環境・同一質問での一次評価です。GPU、ランタイム、コンテキスト長、量子化方式、並列設定が変われば結果も変わります。
今回比較した代表モデル
深掘り対象は、用途の違いが分かりやすい次の4モデルです。
| モデル | 総パラメータ数 | 量子化・構成 | 平均応答時間 | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| Qwen3-Coder-Next | 79.674B | Q4_K_M | 4.35秒 | 短いデモに向く高速候補 |
| Qwen3.5-397B-A17B | 396.346B | UD-Q4_K_M | 8.49秒 | 大型GPUサーバの見せ場 |
| GLM-5.2 | 753.864B | UD-IQ2_XXS | 15.50秒 | 説明が安定した大型ベースライン |
| DeepSeek V4 Flash | 284.335B | Q4KExperts mixed / DS4 | 21.82秒 | 専用ランタイムを含む技術深掘り候補 |
小型モデルとしてはOrnith-1.0-9Bが平均2.37秒、Qwen3-14Bが平均2.93秒で応答しており、速度の基準として有用でした。ただし、今回の記事では「回答がどう変わるか」を見たいので、本文の比較は上の4モデルを中心にします。
質問1: ローカルLLM導入をどう説明するか
質問: ローカルLLMの最初の90日間の導入方針を、クラウドAIとの違い、現実的な用途、期待しすぎない点を含めて説明してください。
この質問は、ローカルLLMを技術者以外にも説明する場面を想定しています。良い回答には、次の3点が必要です。
- クラウドAIとの違いを一言で説明できること
- 実際に試せる用途を具体化できること
- 過度な期待を煽らず、段階導入の形に落とせること
Qwen3-Coder-Nextの回答
Qwen3-Coder-Nextは、かなり実務的で短い回答でした。データを外部に送らず管理できることを最初に置き、社内文書の要約、問い合わせ返信案、コードレビュー支援から小さく始める、という構成です。
人間が最終チェックする前提で、作業時間10〜20%削減が達成できれば成功ライン。
この一文は良いところです。ローカルLLM導入を「すぐに全部自動化する魔法」としてではなく、補助ツールとして定着させる現実感があります。応答も平均4秒台なので、短いデモでは非常に扱いやすいモデルでした。
Qwen3.5 397Bの回答
Qwen3.5 397Bは、用途の整理がより丁寧でした。社内文書Q&A、コード生成とレビュー支援、顧客対応の下書き作成という3用途を挙げ、それぞれの意味を説明しています。
特に良かったのは、「導入即、完全自動ではない」と明示した点です。大型モデルらしく、文章の構成が落ち着いており、検討会や資料に転用しやすい回答でした。
GLM-5.2の回答
GLM-5.2は、より保守的で運用寄りです。最初の30日で環境整備とデータ準備、31〜60日で用途試験、61〜90日で効果と課題の評価、というように、段階を分けて説明していました。
派手さはありませんが、「本格導入の判断材料をまとめる」という結論が自然です。大型モデルを使った落ち着いた説明文としては使いやすい印象です。
DeepSeek V4 Flashの回答
DeepSeek V4 Flashは、社内文書の要約・検索、コードレビュー補助、カスタマーサポートの下書き生成という用途を具体的に説明していました。回答内容自体は実用的ですが、今回の実測では応答が重く、導入説明デモの主役にするにはやや待ち時間が気になります。
一方で、DS4専用ランタイムで動かしている点も含めると、技術記事としては非常に面白い対象です。「ローカルLLMを動かす」だけでなく、「どう分散推論するか」を語る材料になります。
質問2: GPUサーバ障害メモを安全に整理できるか
質問: GPUサーバで推論が遅くなり、OOMやtimeoutが出ている。原因候補を3つ、読み取り中心の確認手順を5つ、すぐやらない危険な対応を2つ挙げてください。
この質問では、回答の賢さ以上に「危険な操作を安易に勧めないか」を見ました。GPUサーバ運用では、いきなりkill、再起動、ドライバ入れ替え、キャッシュ削除に進む回答は危険です。
| モデル | 原因候補の出し方 | 確認手順 | 危険操作への慎重さ |
|---|---|---|---|
| Qwen3-Coder-Next | GPUメモリ、NVLink/PCIe、サーバ設定 | nvidia-smi、dmesg、ログ確認 | gpu-resetやキャッシュ削除を避ける |
| Qwen3.5 397B | メモリ断片化、コンテキスト長、ハング | journalctl、ps、nvidia-smi pmon | kill -9や本番データ削除を避ける |
| GLM-5.2 | VRAM過負荷、I/O遅延、バッチ過積載 | GPU、プロセス、ログ、I/O、ネットワークを順に確認 | 再起動やCUDA入れ替えを急がない |
| DeepSeek V4 Flash | OOM、メモリリーク、同時リクエスト集中 | 時系列ログとプロセス監視を重視 | 強制再起動やgpu-resetを避ける |
この質問では、GLM-5.2の回答が特に運用向きでした。VRAM過負荷、ネットワーク・ストレージ遅延、バッチ・コンテキスト過積載という切り分けが自然で、確認手順も「GPU」「プロセス」「ログ」「システム資源」「ネットワーク」と段階的でした。
Qwen3-Coder-Nextは速く、内容も実用的でした。ただし、回答の中に一部不自然な中国語が混じった箇所があり、公開デモでそのまま見せるにはテンプレートや出力確認が必要です。Qwen3.5 397Bは、より落ち着いた障害整理メモとして使いやすい印象でした。
質問3: 英語技術メモを日本語要約できるか
質問: 英語の技術メモを、日本語で短く要約し、重要な制約や次に確認すべき点を整理してください。
この質問は地味ですが、実務では頻繁に使います。英語のドキュメント、リリースノート、障害報告、技術メモを日本語で読む場面は多いからです。
今回、この要約・翻訳系の質問は多くのモデルが安定していました。差が出たのは、品質よりも速度と文体です。
- Qwen3-Coder-Nextは、短時間で要点を出し、箇条書きも整っていました。
- Qwen3.5 397Bは、短い文章でも過信の禁止、段階導入、アクセス制御まで整理できました。
- GLM-5.2は、読み取り中心のユースケースから始めるという安全な文脈が自然でした。
- DeepSeek V4 Flashは、注意点が明確で、対外向け出力では人間の確認が必要だと明示しました。
要約系タスクだけを見るなら、小型・中型モデルでも十分な場面があります。大型モデルを使う意味は、長い文脈、複数制約、専門性が絡むときに出てきます。
質問4: ブログ記事の構成案を作れるか
質問: ローカルLLM評価の結果を、公開ブログ記事として読まれやすい構成にしてください。読者が得られる実用的なポイントも入れてください。
この質問は、今回の動画とブログ制作そのものにも関係します。ローカルLLMが単発の回答だけでなく、公開コンテンツ作成の補助になるかを見るためです。
Qwen3-Coder-Nextは、速度、メモリ使用量、精度、起動時間、運用しやすさという比較軸を挙げました。技術ブログとして読みやすい構成です。ただし、実測していない指標まで広げがちなので、公開記事では人間側が範囲を絞る必要があります。
Qwen3.5 397Bは、A100 x4ならではの並列化やコストパフォーマンスまで踏み込んだ構成を返しました。大型モデルらしく、記事の見出し案に迫力があります。一方で、これも「今回測っていない項目」と「今回実測した項目」を分けて編集する必要があります。
GLM-5.2は、推論速度、メモリ容量、消費電力、コストパフォーマンスといった比較軸を出しつつ、測定条件を明記する重要性を挙げました。実測値の扱い方が比較的堅実です。
DeepSeek V4 Flashは、測定条件、再現性、相対比較という注意点を明確に出しました。特に「このモデルが最速」と断言せず、「本環境では」と限定する姿勢は、公開記事として重要です。
モデルごとの使い分け
今回の結果を、用途別に整理すると次のようになります。
| 用途 | 候補 | 理由 |
|---|---|---|
| 短い動画デモ | Qwen3-Coder-Next | 約80B級で平均4秒台。画面録画で待ち時間が目立ちにくい。 |
| 大型GPUサーバの紹介 | Qwen3.5 397B / Ornith 397B | 397B級をA100 x4上で実際に動かせること自体が分かりやすい。 |
| 落ち着いた導入説明 | GLM-5.2 | 少し遅いが、回答のまとまりと安全寄りの説明が安定していた。 |
| 技術深掘り記事 | DeepSeek V4 Flash | DS4専用ランタイムや分散推論の題材として面白い。 |
結論として、1つのモデルで全部を解決しようとしない方が現実的です。短いデモでは速いモデル、技術記事では特殊なランタイムを持つモデル、導入説明では安定した文章を返すモデル、というように使い分ける方が、ローカルLLMの価値を伝えやすくなります。
今回の実測から見えたこと
- A100 x4環境では、397B級以上のモデルも現実的な時間で動かせる。
- 短いデモでは、80B級の高速モデルの方が見せやすい場面がある。
- 障害対応や運用支援では、速さよりも「危険操作を避ける回答」が重要になる。
- 要約や記事構成は多くのモデルがこなせるため、速度と編集しやすさが差になる。
- 公開デモでは、回答内容だけでなく、テンプレート、出力抑制、専門用語の見せ方も評価対象になる。
今後は、代表モデルをさらに絞り、より長い質問、複数ターンの対話、RAG構成、実運用ログの読み取りなどで比較すると、ローカルLLMの実用性がより具体的に見えてきます。